この記事は小説『嘘を愛する女』(岡部えつ)のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
また、この記事の内容には「育児ノイローゼ」を含む悲しい事件を含みます。気持ちが不安定な場合も閲覧をしない方が良いかもしれません。
あらすじ
キャリアウーマンの川原由加利は、恋人の小出桔平と同棲して5年。そんなある日、桔平が倒れたと警察が知らせに来る。病院へ向かうと、くも膜下出血で昏睡状態になった桔平がいた。そんな中、警察は由加利に、桔平の免許証が偽造されたものだと告げる。由加利は私立探偵を雇い、桔平の真実を探ろうとする。
ネタバレ
結論を言うと、小出桔平は結婚して子どももいましたが、ある事件が起こったことをきっかけに、名前も家も捨て無気力なホームレスのような生活を送ります。その後、川原と出会い、色々あって同棲することになりました。
今回は、その事件について考えたいと思います。
事件
どんな事件が起こったのかと言うと、いつも通り夫が帰宅すると、妻が幼い我が子を殺してしまっていました。そして、妻も刑務所の中で自殺してしまいました。愛する子どもと妻を失う悲惨な事件です。しかも、愛する子どもと妻を殺したのが、その愛する妻自身であるという悲劇。
一体なんでこんな事件が起こったのか?
どうしたら防げたのか?
誰が悪いのか?
小説には、その事件に関して多くの情報は書かれていませんでした。わかるのは以下の断片的な情報のみ。
- 夫は医者で多忙。
- 妻は望んで専業主婦になった。
- 家事や育児は妻に任せていた。
- 事件の記事には、妻は育児ノイローゼであったと情報あり。
- 事件当日に夫の母は妻に電話をしたが、いつもと変わらない様子で応答があった。
- 夫の母は、妻のことを「大事な孫を殺して許せない」と言っている。
- 妻は、子どもと心中しようと思ったが、夫に子どもを殺したことを伝えないといけないと思って、子どもを殺した後に夫の帰りを待っていた。
- 妻が刑務所に入ってから、妻が刑務所で自殺をするまで夫は1度も面会に来なかった。「妻の罪を軽くする」弁護人にも「妻の罪を重くする」検察にも裁判に協力して欲しいと言われたが、夫は何もしなかった。
- 子どもは1人。
- 夫は事件が起こるまで、何の問題もない家庭だと思っていた。
事件の考察
少ない情報と、私のこれまでの人生の経験や知識から事件を考察してみます。
一体なんでこんな事件が起こったのか?
原因で1番考えられるのは、情報にもあった「育児ノイローゼ」。
でも、子どもと心中するなんで、そんな重度の育児ノイローゼが、一緒に住んでいる夫や電話をする関係のあった夫の母が気づかないことなんてあるのか?
どうしたら防げたのか?
妻の育児ノイローゼの原因は孤立?
もし、孤立していたことが原因ならどうしたら良かったのだろう。
妻は育児に疲れ辛い気持ちで日々を送っていることを誰にも相談できなかったし、誰も妻の気持ちに気づけなかったのか。
妻は、子どもに手をかける前に誰かに相談できなかったのか。
妻の周りの人は、妻の悩みに気づけなかったのか。
誰が悪いのか?
妻:子どもに手をかけるのを思いとどまるべきだった。子どもがかわいそう。完璧な妻でないと、医者の夫を支えないと、とプライドが許さなかった?家庭以外に居場所は無かった?親になって、特に専業主婦になったのなら、子どもを責任もって育てるべきであった?せめて、それができないのなら、だれか他の人に託すべきだった?
夫:もっと妻のことを気にかけるべきだった?仕事が多忙で、家事育児を妻に任せていたとしても、妻の心のケアはしていた?育児中はもっと家庭に時間を割ける仕事にすれば良かった?育休をとるべきだった?妻が事件を起こした後、なぜ面会に行って声をかけてあげなかった?事件後、なぜ何もなかったのかのように何もかも捨てて別の人生を歩めるのか?
夫や妻の親:妻の育児疲れを気遣っていたのか?むしろプレッシャーになるような言葉をかけなかったか?
保健師など行政職員:新生児訪問や1歳6か月児健診、3歳児健診などのタイミングで母子に関わる機会で母の育児負担を気づけなかったのか?また、育児のSOSを出せる場所を用意して、それをちゃんと伝えられていたのか?
おわり
2026年は、毎月小説を読もうと考えていて、第2回めとなる2026年2月は「嘘を愛する女」を読みました。
2018年に映画化もされている小説なので、聞いたことがある方もいるかもしれません。
「噓を愛する女」で出てくる事件は、とても重く辛いテーマでした。
特に、こんな事件があると思って読んでいなかったので衝撃的でした。
でも、母子や一家での心中は実際に起こりえるし、ニュースで見たこともあります。
正直、私もワンオペで自分の体調も悪くて余裕がない時に精神的にまいってしまうことや、強く怒ってしまうことなどがあり、妻の気持ちを1%も理解できないというわけではありません。
親や子どもの性格や成長発達の様子、仕事や家族のサポート状況など、本当に家族それぞれではありますが、「育児は大変なこと」「地域のみんなで子どもを育てる」「子どもは宝物のような存在」という意識をみんなが持つことが必要なのではないかと感じました。
今回の事件では、妻はもっと自分の気持ちをオープンにして誰かに相談した方が良かったし、夫はもっと妻を労わって無理をしてないかよく話をするべきだったし、周りの人も保健師などももっと気にかけるべきだった。もっと、どちらもが歩み寄るべきだった。
私も、育児をしている1人として、育児をしている人の周りにいる人として、相談したり気にかけたりしたいなと思います。
そして、災害対応と同じですが、平時からできていないことは、重度の育児ノイローゼになった非常時にはできません。
ここ数年の間に地域に広がった「産後ケア」は虐待を予防する目的もあります。
心にちょっと余裕のある時から、少しだけ勇気を出して子育て支援センターや産後ケアなどに行って子どもや育児のことをお喋りしたり、同じく利用している人に話しかけたりしたいなと思います。
また、会える距離に頼れる身内や友達がいる人は最高。
無理のない範囲で、周囲の人を巻き込んで子育てをしよう。
自分の子どものために。

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